2004
vol.2

 シリーズ・団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ!
 ―第2回「遂に大平農場で修行開始!」―

 今春、鎌倉市手広で大平農場を経営する大平 勝(まさる)さんに野菜づくりの基本を学ぶため、念願の弟子入りした。大平さんは自宅近くと鎌倉山にある自分の畑約80アールで、野菜づくりをしているプロのお百姓さんである。道楽か、趣味の類いでなければ、有機肥料、無農薬栽培は、難しいと考えていたが、なんと大平さんは、30年以上前から、有機・無農薬野菜を消費者に届けている。定年後、故郷の下総台地(千葉県)の実家の畑で、有機・無農薬野菜をつくりたいと夢見ている。それも道楽ではなく、職業として。そんな私にとって大平さんは願ってもない師である。

▽つきまとう「隔靴掻痒感」
 大平さんから学びたいことはたくさんあるが、まずはプロの農作業とはどういうものかを、実際の作業を通じて、この目で確認したい。日曜百姓をして、分からないことがあると実家に電話して聞いたり、行き付けの園芸店で、教えてもらっている。そこそこ疑問も解消し、結果としてかなりの収穫もある。でも、「本当のところは違うのではないか」という「隔靴掻痒感」のようなものが、これまでつきまとってきた。

 土づくりといい土をつくるために不可欠な有機肥料の作り方も学びたい。大平さんは、生産した野菜を販売するために、専門業者にお願いするだけでなく、消費者直結の販売ルートも持っている。どのようにして販売ルートを開拓し、維持しているのか。是非とも知りたいところだ。それに種まきのタイミング。無農薬農業を実践するためには、種を蒔くタイミングが重要だ。例えば大根を蒔く時期。ちょっとしたタイミングの差で、若い芽が、虫に食べられるのを避けられる。季節との折り合いをどうつけるかがポイントだ。

▽複数の世代にまたがる兄弟子たち
 4月の上旬に弟子入りをお願いし、4月中旬、兄弟子たちと一緒に畑に出た。大平さんは毎週火曜日、私のような希望を持つ人間に、草取りなどの農作業の支援を求める一方で、野菜づくりの実践教育をしている。兄弟子の数は数人。定年を迎えた人もいれば、私のような団塊の世代、あるいは40代、これから農業一本で勝負しようとしている20代の青年もいる。複数の世代にまたがっている。それぞれが目的をもって、大平農場で真剣に修行している。機会を見て、兄弟子たちの修行ぶりについても紹介したいと思っている。皆でやる農作業は、にぎわいがあって実に楽しい。

 初日の授業の「教室」は、午前中が鎌倉山の畑で、午後は手広の畑だった。作業内容は午前が、ジャガ芋の雑草取りと里芋の種芋を植えること。午後がタマネギの雑草取りと里芋の種芋を植えることだった。種芋間の距離、土の深さ、肥料の施し方をしっかりと確かめた。それほど距離が離れていないのに、鎌倉山の畑と手広の畑では、土の質が違った。鎌倉山の方が、粘土質で堅い。こういう土からは、いい里芋が収穫できるとのことだった。早生タマネギは一ケ所に2本植えてあった。「今どきの消費者はあまり大きなタマネギを好まないからさ」と大平さん。しかも2本植えだと収量も多い。なるほど、合理的だ。初日から、いろいろ参考になった。

▽「あんたのような人は稀だ」
 お昼は朝、とったばかりの筍がたっぷり入った筍ご飯をいただいた。夜は夜で、「安全でおいしい野菜をつくりたい。自信を持ってつくっている野菜だから、絶対に安売りはしたくない。病気を取り除くことよりいかに病気ならないかを考えねば」という大平さんの持論を伺いながら、芳しい香りのする自家製のヨモギ餅をいただいた。
「勉強させてくださいといって来ても、かつて夕方まで残った人はほとんどいなかった。大体午前中で『今日はこれで』と帰ってしまう。あんたのような人は稀だね」。嬉しいことに大平さんからお誉めの言葉をいただいた。農作業はきつい。体力と忍耐力が必要だし、なによりも土が好きでないと無理だと思う。

 「修行」を終えて帰る時に、大平さんから「京芋」と「エビ芋」の種芋を少し、いただいた。里芋の仲間で、普通の里芋より、味がいいという。借りている畑に早速植えた。約1ケ月後、かわいらしい芽が出た。秋の収穫が楽しみだ。私にとって辛いのは、大平農場の研修日が毎週火であることだ。現役サラリーマンだから平日は、なかなか休めない。でも、できる限り参加したい。なお、大平さんを紹介してくれたのは、LOVES元気やさいネット・やまとの渡辺敦代表である。今年3月に開催された第9回丹沢シンポジウムで御一緒した。
▽LOVES元気やさいネット・やまと
http://www.genki-yasai.net/shop/gyn-yamato.php
▽大平農場
http://www.genki-yasai.net/shop/farmhouse/oohira.htm
(了)


わが師・大平勝さん 自家製のマル秘の有機肥料 タマネギの草取り)
トマトの芽かき
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