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 【インタビュー】リラ自然音楽歌手、作詞、作曲家・青木由有子さん
 歌うことで人は変われる



 青木由有子さんは、既成の音楽とは違う自然音楽という新たな分野で近年、北鎌倉 を拠点に、目覚ましい活躍をしている。その美しい歌声と旋律は、聞く人の心の奥底 にまで染み入り、深い感動と感銘を与えている。
 青木さんは、チャリティ・コンサートをはじめとしたボランティア活動にも積極的 だ。6月2日(日)には、北鎌倉女子学園で開催される「第2回 講演&チャリティ・ コンサート 台峯の命(いのち)の叫び」(主催 NPO法人・北鎌倉の景観を後世に 伝える基金)に、ボランティアでステージに立つ。この青木さんに自然音楽にかける 夢や6月2日のコンサートに臨む心境を中心に聞いてみた。
 (講演の講師は、エッセイストで「イギリスはおいしい」「リンボウ先生のへそま がりな生活」などの著書のある林望氏。プログラムが完成次第、このホームページの 「伝言板」に掲載の予定です)

 ―最初に自然音楽の説明をお願いします。
 青木さん
 自然界の植物、大地、風、水、光などは、歌っています。自然界は美し く、心があります。その美しい心を感じるとメロディとか音楽になっていきます。つ まり、自然界の歌っているものを聞き取って歌うこと、それが自然音楽です。 

 ―詩人や画家が自然に接した時に、そこから感じ取ったものを詩や絵画で表現する ようなものなのですか。
 青木さん
 そうですね。私にはメロディとして聞こえるというよりは、本当に歌っ ているように思えます。例えば最近、「レモンの歌」という曲を作りましたが、レモ ンの木は話しかけるとちゃんと答えてくれるのです。「レモンの歌を歌って」とお願 いすると歌ってくれます。「えっ、そんなことがあるのか」と思われるかもしれませ ん。でも、一度私の歌を聞いていていただ方は、「ああ、どこかで聞いたことがある 」と納得してくださいます。

 ―自然音楽を始めたきっかけを教えてください。
 青木さん
 中学時代の不登校がきっかけです。攻撃的な気持ちになってしまい、学 校へ行くのが怖くなり、どうしても行けなくなりました。約3年間、自宅の部屋に閉 じこもっていました。朝になると寝て、夜になると起きだす生活を続けました。昼夜 が逆転してしまいました。日の光を浴びると気分が悪くなってしまったのです。きっ と、太陽の光は生命を育むプラスの光なので、マイナスの気分でいる人間には強すぎ
たのでしょう。両親は「学校に行きなさい」と言い、先生と友だちからも「学校に来 なければ駄目」と言われました。自分をつくづく駄目な人間と思いました。ある時、 母が心配して「真っ暗闇の中にいるのは良くないから日の光を浴びなさい」と言って くれたので、庭に出てみました。そうしたら、日の光を浴びても気持ちが悪くなりま せんでした。それから、毎日5分から10分、寝る前に外に出て落ち葉を拾いました。
寝る前といっても朝なんですけれども(笑い)。


「自然音楽を歌うことで私は変わることができた」と語る青木さん(2002年4月)
 「チャリティ・コンサート」会場で挨拶する青木さん(2000年6月、北鎌倉女子学 園)

 ―劇的な変化があったのですね。
 青木さん
 自然ってこんなにも美しいものかと感じたのです。落ち葉の輝き、空を 流れる雲、アリの行進を見て、こんなに素晴らしい世界があったのかと驚かされまし た。自然との対話が始まりました。それまでは自然界に存在しているアリやゴキブリ 、植物を自分より下の存在だと思っていました。私自身、何かどろどろした世界にい たようです。植物に話しかけると答えてくれたり、自分を見てくれているような気が しました。お陰で元気になりました。今まで自分より下だと思っていた植物が、話し かけると私に元気を与えてくれたのです。私も植物のような生き方がしたい。人のた めに何かをしたいと心の底から思ったのです。

 ―人前にも出られようになった。
 青木さん
 人生、180度転換しました。前向きで明るくなりました。母親が、参加 していた宮沢賢治の朗読会に出るようになって、唱歌を歌ったりしているうちに、い つの間にか歌手になってしまいました。

 ―どうして、登校拒否になったのだと思いますか?
 青木さん
 当時はどうしてなのか、まったく理由が分かりませんでした。でも、今 考えると競争を強いられることが嫌だったのだと思います。学校では運動会に限らず 、美術、音楽など、どの教科でも順番を付けられてしまいます。このことに耐えられ なかった―。子供のころから、そういった世界とは無縁の自然が好きでした。田んぼ のあぜ道に寝っころがって、植物や空や雲の流れていくのを飽きないでじっと見てい ました。

 ―宮沢賢治はあなたにとって、どういう存在ですか。
 青木さん
 答えるのが、難しい質問ですね。宮沢賢治の童話からは、自然界の深遠 なメロディが聞こえてきます。凄い人だと思います。でも、実際に会ってみると普通 の人なのかも知れません。ユーモアのある人だったと聞いています。

 ―青木さんの歌に対し、どのような反応がありますか。
 青木さん
 コンサートの時、アンケートを実施しますが、回収率が凄いのです。ほ ぼ100%です。「とても良かった」というのと「勝手に涙が出てきて止まらなくなっ た」という回答が、数多くあります。涙が出てくるのは、自分で歌っているのではな く、曲に歌ってもらっているからだと思います。さっき「レモンの歌」を例に出しま
したが、この曲を作る時にレモンと会話をしましたし、歌っている時には、レモンの 「心」、自然の「息吹」を感じます。
 ―自然音楽を始めたときと現在では、何か変化がありますか。
 青木さん
 うーん、自分ではよく分からないですね。
 *注 インタビューに立ち会った母親のリラ研究グループ自然音楽研究所の青木由 起子代表によると「曲が進化している」という。その理由を青木代表は次のように述 べた。
 「一番最初は植物の歌を聞き取って、ただそれを歌っていた。意識は自然界にのみ 向いていた。しかし、現在は人の心の苦しみというか潜在意識にまで広がっている。 だから、曲に深さが出てきた。深さは、曲が人間と自然との共生の方向に広がってい ることにも関係している。かつて野生動物だっ犬、猫は、人間とのふれあいの中で、
進化した。自然界は人間に愛されると変わってくる」

 ―北鎌倉女子学園での6月2日のチャリティコンサートは、2年前に続いて2回目です
ね。現在の心境をお聞かせ願います。
 青木さん
 自然界は私たちが歌うと一緒になって歌ってくれます。自然界が幸せに なるよう、恩返しをする気持ちで歌いたいと思います。

 ―喜びは?
 青木さん
 個人的には淡々と音楽活動をしていますが、作った曲の心を知ったとき とか、コンサートでお客さんから「良かった」と言ってもらうと嬉しいですね。

 ―最後に将来の夢を。
 青木さん
 自然音楽を歌えば、自然界の美しい心に触れることができます。歌うこ とで私は、前向きに生きられるようになりました。私は変わることができたのです。
自然の心を多くの人と感じあえるよう、自然音楽を広げていきたいですね。皆で歌え ば、プラス思考に変わります。そして、私を変えてくれた植物にあこがれています。
植物のような生き方がしたい。動物や幼児を虐待するような人がいなくなるまで歌い 続けたい。なぜなら、私には歌うことしかできないのですから。

 ▽青木由有子(あおき・ゆうこ)さんのプロフィール(癒しの音楽HPより)
 リラ自然音楽歌手、作詞・作曲家。自然界とワンネスとなり、宇宙の呼吸音(自然 音楽メロディー)を聞きとり、独特で清らかな音楽の世界を作り出している。ストレ スをかかえた人、心が傷ついた人へおくるスピリチュアルなコンサートを精力的に行 うほか、地球の自然を守るためのコンサートやチャリティー・コンサート、その他、 学校・ホスピス・施設などでの講演やコンサートを数多く行っている。
 ■主な記事掲載、出演など
 朝日新聞「ひと」、毎日新聞「人・模・様」、NHKラジオ第一「ラジオ談話室」 「いきいき倶楽部」、フジテレビ「もうひとつの地球物語」、月刊「グリーンパワー 」、月刊「アネモネ」、季刊「気の森」、月刊「中学教育」など、多数。

「癒しの音楽」(リラ研究グループ自然音楽研究所)HP
http://www.lyra.co.jp/


 

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