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 ◇魚梅商店―店主は今どき貴重な職人気質(鮮魚)―


 大の魚好きである。故郷が日本有数の漁業基地・銚子港の近く、しかも利根川沿いにある。物心ついた時から、新鮮な海の魚と川魚を食べて育った。大学を卒業し、就職してから最初に赴任したのが博多。次が長崎。3番目が大阪だった。いずれも魚とは縁が深い土地柄だ。

 北鎌倉に転居してから、鎌倉市内のいろんな鮮魚店をリサーチした。「魚梅」の右に出る店はない―。これが私と妻の一致した見解だ。妻は長崎出身。彼女もまた、魚には目がない。彼女の父親は超釣りキチだった。長崎にいた時、五島列島の近くまで、釣りに何度か連れていってもらった。1キロを超す真鯛、甘鯛、イトヨリなどが,面白いように釣れた。
 魚梅商店の場所は材木座海岸に近い。九品寺を目印にしてたずねるといい。

 住所 鎌倉市材木座6丁目3−27
 電話 0467−22−0363
 FAX 0467−22−0626

▽魚の臭いがしない希有な魚屋さん
 店頭で魚の臭いがしない希有な魚屋さんである。その理由はとびっきり新鮮な魚しか置いていないのと、店じまいした後、後片付けを午後10時頃までかけてきっちりやるからだ。店主は礒島梅男さん。「職人」を絵に書いたような人である。目利きである。
 仕事ぶりも実に丁寧だ。仕入れた魚をケースに入れて店頭に並べるわけだが、そのケースに整然と氷を敷き詰める。手抜きは一切なし。その姿を見ていて、ある種、感動のようなものを覚えたことがある。自分の扱う商品に誇りと愛着を持っている。凄く大切なことだと思う。

▽垣間見せた悲しい表情
 「売り値を高くすれば、いい魚を仕入れることができるが、それではだめ。お客さんにこの値段でこんな新鮮で美味しい魚が買えるなんて、と思ってもらわねば」。魚は地元の漁師さんと神奈川区の本場市場から仕入れる。「魚梅は刺身がいいだよね」
。近所の酒屋の御主人も太鼓判を押す。ほとんどが常連客である。
 ある時、梅男さんが悲しい表情を垣間見せた。二人連れの女性客が店を訪れて次のように言った。「250円、このサケの切り身、高ーい」。100円で売られているスーパーの特売品の価格と比較しての発言だった。一見(いちげん)のお客さんだった。このやり取りを見ていた私の心も少し、痛んだ。

▽小アジの刺身が絶品
 私は店頭に並んだ新鮮な魚を見るのが楽しみだから、「買い出し」と称して、毎週末、魚梅を訪れる。地元の漁師さんから仕入れた腰越産の小アジの刺身が絶品だ。特に脂の乗った5月。一人前500円。梅男さんも魚をさばくが、基本的な役割は仕入れと配達。刺身づくりは母親の静江さん、注文取りが奥さんの実千代さん。
 静江さんの手は不思議だ。真冬でも手袋をしないで冷たい水を扱っている。それなのに、つるつるしている。力強くてあったかそうな手だ。たまには親子喧嘩らしき場面もあるが、3人のチームワークがすごくいい。見ているとほのぼのとした気分になる。「ドリームチーム」の「活躍」は、普段の生活の中でも見ることができるのだと思った。人気スポーツや映画制作の世界だけの専売特許ではない。

▽天日干しの干物もお値打ち
 天日干しの干物もお勧めだ。素材が刺身になるくらい新鮮だから、とてもおいしい。種類も豊富で、値段もお値打ちだ。通常置いてあるのがアジ、イワシ(丸干し)、エボダイ、カマス。秋はサンマが加わる。時々、金目ダイ、カレイ、サヨリなんかも置いてある。
 私は行くと必ずアジの干物を買って帰る。このアジの干物を、網で焼いている時のにおいが、たまらなくいい。干物は電話とFAXでの注文が可能だ。クール宅急便で送ってもらえる。いつまでも街に残ってほしい、そんな魚屋さんである。(了)

 

丁寧にカツオをさばく、
職人気質の礒島梅男さん
魚梅商店の店頭では魚のにおいが
しない
度抜群の魚

 

 
 
 
 
 

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