特   集


  大京が16メートル、5階建て案を提示−「信義違反」と協議会は修正を要求−


 
台峯方面から見た着工前の旧小泉邸付近の風景 洋館と看板


◎「信義違反」と協議会は修正を要求

 北鎌倉・旧小泉邸跡地にマンション建設問題で、山田建設からすべての権利を譲り受けたマンション専業首位の大京は、11月19日、近隣住民への説明会の席上、マンション建設計画の具体的な内容を明らかにした。計画は「(仮称)ライオンズマンション北鎌倉」と銘打たれており、概要は(1)敷地面積:3、667平方メートル(2)規模:地上4階、地下1階(3)高さ:14、3メートル(4)戸数:63戸(5)工期:平成17年1月から12月(予定)―などとなっている。

▽どこを基準にしても「15メートル以下、4階建て」
 この計画は一見、北鎌倉まちづくり協議会が主張してきた「15メートル以下、4階建て」に合致している。しかし、これはあくまでも形式的な数字である。マンション建設予定地は、JR横須賀線側と鎌倉街道側では高低差がある。計画に示された数字は、両者の平均値を基準にしたもので、鎌倉街道側を基準にすると、実質的には「高さ16メートル超、5階建て」の計画であり、北鎌倉まちづくり協議会の主張とは大きく懸け離れている。

 このため、北鎌倉まちづくり協議会は、大京に対し、どの地点を基準にしても「15メートル以下、4階建て」となる計画への修正を強く要求した。さらにマンション全体の配置が、周辺に圧迫感を与えていることや、北鎌倉の街並み景観との整合性に問題があることを指摘、改善を求めた。

▽大京への権利譲渡は6月
 旧小泉邸跡地にマンション建設問題は、今年3月、山田建設が近隣住民に提示した「15メートル以下、4階建て」を柱とした修正案で決着が予想されたが、事業主体の交代によって、仕切り直しの形になっていた。山田建設と大京によると、権利譲渡の正式契約は6月11日に交わされた。

消え行く北鎌倉のシンボル

 山田建設が撤退した理由は明らかになっていないが、5階建てから4階建てとした場合の事業の採算性に不安を感じたものと見られる。一方、「ライオンズマンション」のブランドで全国展開をしている大京は最近、鎌倉市の佐助地区と山崎地区で新築マンションの販売を開始するなど、鎌倉市でのマンション建設に強い意欲を示していた。

▽ハクモクレンなどは現状のまま保存
 山田建設は、過去4回開催された近隣住民説明会の席上で、北鎌倉まちづくり協議会や住民側の要求を受け入れ、5階建て案を撤回、「15メートル以下、4階建て」とする修正案を提示するとともに、鎌倉街道沿いのハクモクレンやJR横須賀線側のクスノキ、イチョウの大木は、現状のまま保存し、黒塀は基本形を残すことを確約していた。

 このため、11月19日の近隣樹民への説明会では、大京が山田建設と近隣住民の交渉の結果を、どこまで尊重するかが焦点となっていた。こうした中で、大京はハクモクレンやクスノキ、イチョウの大木は、現状のまま保存する意向を明らかにしたものの、「実質的高さ16メートル超、5階建て」案を提示したことから、北鎌倉まちづくり協議会は信義違反と受け止めた。

▽消え行く北鎌倉のシンボ
 今回のマンション建設計画の具体的な内容説明に先立ち、大京は近隣住民に対し、旧小泉邸の解体作業計画に関する説明会を実施。既に洋館を除いた解体作業に入っている。昨年までなら、今の時期は洋館とイチョウ、それに黒塀と大木の組み合わせが、地域の住民や観光客の目を楽しませ、安らぎを与えてくれた。

 小泉家の先祖が寄付したという権兵衛踏切付近のたたずまいは、1年を通して多くの人びとに「ここが北鎌倉」という実感を与えてくれた。あらためて、旧小泉邸は、北鎌倉のシンボル的な存在だったことを痛感する。解体工事に先立ち、旧小泉邸が一般公開されたが、多くの市民が足を運び、別れを惜しんだ。解体工事の進行に伴い、その存在も消滅寸前だ。

 大京は企業利益追求のために、かけがえのない市民の共有財産を破壊している当事者であるとの自覚と、企業も個人同様、社会の構成員であるという認識を持つべきだろう。大京が住民の声に真摯に耳を傾け、北鎌倉の景観と整合性を持った修正案を提示することを期待したい。
(了)

公開日には多くの市民の姿が…
解体工事前の洋館とイチョウ(2002年秋)
解体工事前の洋館と白モクレン(2003年春)
解体工事前の黒塀(2002年秋)
解体工事前の権兵衛踏切付近
解体工事中の権兵衛踏切付近
解体工事中の黒塀
 
 
 

 

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