第1回 団塊サミット

【基調講演・691万人団塊の行方(要旨)】
             東京女学館大学教授・西山昭彦


【西山昭彦(にしやま・あきひこ)氏プロフィール】
 東京女学館大学国際教養学部教授。東京ガス(株)西山経営研究所長。 1975年一橋大学社会学部卒業後、東京ガス(株)へ入社。ロンドン大学大学院に留学、ハーバード大学大学院修士課程修了。その後、社内ベンチャーとして「アーバンクラブ」を設立。法政大学大学院博士課程修了、経営学博士。東京ガス(株)都市生活研究所長や法政大学客員教授を経て現在に至る。企業経営、人と組織全般にわたる幅広い分野をカバーし、執筆・講演活動を旺盛に展開する。著書36冊。
http://www.president.co.jp/book/1788-X.html

◎高齢者の概念を根底から覆すかも
 −悠々自適は少数派−
10年前に団塊世代の座談会に出たが、その席で団塊の一人から「おれたちは競争で鍛えられている。お前たち(後に続く世代)には負けないぞ」といわれた。この人はその後、大手ゼネコンの社長になった。団塊世代は人数が多く、損しているといわれてきたが、実際は逆ではないか。団塊世代は力が強く、この世代が歩いた後はぺんぺん草も生えないといわれている。他人の意見を聞かず、こだわりが強いのもこの世代の特徴だ。

▽4人に3人は仕事を継続
 2007年から、団塊世代の一斉に退職するとオフィスビル、飲屋街はガラガラ、夕刊フジは部数激減、朝の通勤時の満員電車はなくなるといわれている。財務省の調査によれば、2010年で労働力が130万人減少し、国内総生産(GDP)が16兆円減少する。
 しかし、本当は定年にはならない。団塊世代の4人に1人は完全にリタイアするが、4人に3人は、フルタイムではないが仕事を継続する。東京都の調査によると50代の男性の90%は「健康」と考え、24%が「退職後に独立自営したい」、40%が「NPOやボランティアなどに参加したい」と回答している。団塊は自己顕示欲が強く、自営業やボランティア活動をすることで、社会に関わっていこうとする欲求が強い。悠々自適は少数派だと思う。

▽「亭主、元気で留守がいい」は歴史的事実
 団塊世代は2分の1が、3大都市圏に住んでいる。地方から都市に流入し、地価を押し上げた。定年後故郷に帰るのは1、4%という調査結果がある。そのまま都市圏に定着することになるだろう。 団塊夫婦を別々にインタビューすると妻の不満が強い。「亭主元気で留守がいい」というのは歴史的事実だ。妻は「家にいられると頭にくる」といっている。現在は社会的分業が成立し、夫は働きに出ているから、家にいる時間が少ない。そこに、希少価値がある。また、給料を持ち帰ってくる。

 夫は定年で、こうした二つの価値を失うことになる。対策は二つ。一つは引き続き留守をする。受け皿として、NPO活動がある。行くところがあるというのは大事だ。もう一つは家にいたら家事を分担する。料理専門学校に通い、料理の仕方を覚えることを勧める。夫婦仲良く暮らすには、一緒にやるか、相手を全く無視するか、はっきりした方がいい。中途半端は不満度が高い。自由行動を許し、互いに勝手にやる。

▽ 少年の時の気持ちで出発点に立つ
 定年を機にフリーになれる。組織は社会的に作ったもので、元々は個だった。30年も40年も組織に属しているとおかしくなっている。もう一回、少年の時の気持ちになって、出発点に立てばいい。人間、一人では生きることはできない。人と人とのネットワークが必要だ。

 定年後、有償の仕事をするに当たっては「一人独立自営」も選択肢だ。70代で「一人独立自営」をして、成功している人たちには共通項がある。一つは在職中に「営業ならあの人だ」といわれるくらいのスキルを身に付けている。多分、40代、50代でやっているしごとが、職業人生の中で、ベストの仕事だと思う。この仕事を守る。二つ目は社内の後輩、あるいは現在の取引先が潜在顧客であると意識していた。60歳過ぎて、新規の顧客を開拓することは無理だ。三つ目は同じことをやっている人たちとの情報交換の場を持っている。一人になると社会的に必要な情報が入らなくなる。

▽団塊はいつもドラマを見せてきた
 団塊世代の歴史を振り返るとキーワードは、少年マガジン、プレハブ校舎、平凡パンチ、アイビー、学生運動、企業戦士、友達夫婦、マイホーム、管理職、ポスト不足、早期退職に集約される。局面毎にさまざまな心配はあったが、団塊世代はことごとく覆し、新しい文化を創ってきた。

 消費市場のリーダーになる一方で、生産側で新たな活動をするのではないか。「一人独立自営」したり、一人で何かの運動をしたり。これが団塊世代の最後のドラマかもしれない。きっと高齢者の概念を根底から覆すのではないか。

 


第1回団塊サミット開催報告【主催者挨拶】■基調講演・691万人団塊の行方(要旨)シンポジウム「自分の居場所」ハイライト【声】(北鎌倉湧水ネットワークへのメールから)写真集

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